小学5年生のころ。ぼくの学年の男子たちが昼休みに夢中になっていた遊びは「ハンドベース」だった。 軟式のゴムボール一つで利き手をバットに見立てて行われる簡易野球。もちろんグローブなんて使わない。運動場の土を運動靴でえぐりながら線を描き、ホームベースと一塁二塁三塁のベースの位置を設定すれば即席球場が出来上がる。 昼休みの運動場は全学年の小学生たちが一同に介してごった返す。 いち早く「場所取り」をすることが今日1日を楽しむための肝となる。給食を食べ終えたものから順に急いで校舎の階段を駆け下りていき、6年生が降りてくるより先に球場を建設するの…