I’m back. Omatase. 

カテゴリー: コラム

あたらしく自転車を買った。嬉しくて無闇やたらに走り回っているとこんなところに喫茶店があったのかと虚をつかれる。年季の入った木造住宅の玄関先には白いペンキで “珈琲” とだけ書かれた、これまた年季の入ったボードが掲げられている。中を覗かずとも店の2階が居住スペースであることが一目瞭然で、いかにも僕が好きそうな佇まいである。

知ってさえいればもっと早くに来たのにと思いながらその喫茶店を通り過ぎ、次の信号で行儀良く停止する。待っているあいだ、こんなに近所にあるのにどうして気がつかなかったのだろうと思う。

多くの子供がそうだったように、自分にもその昔夢があった。何にでもなれるような気がしていた。 映画を観るようになった10代前半の頃、私はスクリーン上で繰り広げられる人間模様に感動し、登場人物に想いを馳せた。映画を観て世の中にある職業を知り、将来について色々想像した。 ロビン・ウィリアムズがお気に入りだった。『レナードの朝』や『パッチアダムス』で医者を演じる彼に影響されて、自分も医者になりたいと思い、『グッド・ウィル・ハンティング』の彼を観て心理学者もいいなと思ったりした。 ゆとり世代だからか、小学校や中学校では将来の夢について作文で書く…

高校生のころ、部活の先輩が電車のなかでハンバーガーを食べようとするのを止めたことがある。他の乗客からの視線もあり、車内でマクドはマズイと諭すと、先輩はこう答えた。 「食べていいか考えたんやけど……ジョン・レノンやったら、電車でハンバーガー食べるやろなと思って」 あのとき、自分は車内に持ち込まれたマクドナルドの袋を、はっきり「異物」と捉えていた。 周りもそうなのだろう。ポテトのニオイが持ち込まれると、乗客は一斉に不満を表明しだす。ムッとした表情がニオイの主を探し出し、舌打ちまで聞こえることもある。自分も同じ感覚だったからこそ、ジョンを模…

©️1986 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. 12歳の頃、友達を探していた。12歳が終わるまでに親友と呼べる存在が欲しかった。日々失われる少年時代。中学受験を控えて私は焦っていた。というのも、映画『スタンド・バイ・ミー』の最後にある言葉を額面通り信じていたからだ。 「あの12歳の時のような友達はもうできない」 エンディングが流れる前に、作家となった主人公がコンピューターに打ち込む言葉。 それを見た小学校低学年の私は、「親友を見つけるなら13歳…

(C)2021 C&Iエンタテインメント 忘れた頃にいきなり現れて、おもむろに心臓を握ってくる。とてもじゃないけど、息もできない。そして、いきなりいなくなる。本当なら、会った瞬間にぶん殴って、叫びながら逃げた先の河原なんかで涙のひとつでも流してやりたい。なんで戻ってくるんだよ。とっくにさよならしたはずなのに。すれ違うだけで、苦しくてしょうがないんだよ。 でもさ、やっぱり会えるとなんだかんだ嬉しいんだ。色々とひどいことを言ってしまってすまない。謝るよ。本音を言うと、どこにいたの、探してたよ、って感じなんだ。実のところ、君に会って…

「部室」ということばを聞くと心臓からきゅんと音が聞こえます。高校時代はソフトテニス部に所属していて、下手くそで全然楽しくなかったんだけれど、ソフトテニス部の部室のことは好きでした。歴代の先輩たちが置いていったラケット、手作り感あふれる木のベンチ、品の無い落書き。点在する物はゴミなのかゴミじゃないかすら分からず、所有者も不明で、そもそもいつからそこに存在しているのか分からない。すべてが部室の構成要素としてはかげがえのないものであるように見えて、でも何かがなくなっても決して気づかないだろうという予感もある。狭くて雑多な空間の中に、時空を超…

ご無沙汰しております、フラスコ飯店店主の川合です。 記事タイトルの通り、「フラスコ復活祭2021」と題しました生配信を急遽おこないます! 日時は8月27日(金)の23時35分頃から! 場所はTwitter スペースにて! なにをするの? 「復活祭って言ってるけど、そもそも死んでたの? そうなの?」という話題から、今後更新する記事のチラ見せこぼれ話や、いま気になる映画の話などをトークする予定です。  Twitter スペース(clubhouse のパクリみたいなやつ)を通じてお話しますので、飛び入り参加も大歓迎! ※アーカイブ…

2021.07.05 / / コラム

映画館に行けなくなった。数字でしか知ることのない、目に見えない病気の脅威を改めて実感した。なんともお気楽な話で大変恐縮なのですが、娯楽だって立派な必要最低限だ。

しばらくして、映画館には行けるようになった。そもそも映画館は感染リスクの低い娯楽施設である。納得だ。しかしまだ本調子ではない。席数を制限する劇場もあり、なによりレイトショーが全然やってない。

贅沢かもしれない。けれどやっぱり僕はレイトショーに行きたい。

2021.07.02 / / コラム

(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

夏。緑と青空、セミの声と氷が溶けてグラスの中で傾く音、雨上がりのアスファルトの匂い、山下達郎の歌声。ぼくは日本の夏が大好きだ!

そんな「夏」というアウトドアなイメージに対して、真逆のインドアなイメージのインターネットの世界をぶつけて混ぜ合わせ、リンクさせて物語を作り上げた作品が細田守監督の『サマーウォーズ』(2009)である!

2021.06.18 / / コラム

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