Te wo Arai mashou.

カテゴリー: コラム

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12歳の頃、友達を探していた。12歳が終わるまでに親友と呼べる存在が欲しかった。日々失われる少年時代。中学受験を控えて私は焦っていた。というのも、映画『スタンド・バイ・ミー』の最後にある言葉を額面通り信じていたからだ。

「あの12歳の時のような友達はもうできない」

エンディングが流れる前に、作家となった主人公がコンピューターに打ち込む言葉。

それを見た小学校低学年の私は、「親友を見つけるなら13歳になるまで」なんていう風に信じてしまったのだ。おかしな話だけど、でも切実だった。

(C)2021 C&Iエンタテインメント

忘れた頃にいきなり現れて、おもむろに心臓を握ってくる。とてもじゃないけど、息もできない。そして、いきなりいなくなる。本当なら、会った瞬間にぶん殴って、叫びながら逃げた先の河原なんかで涙のひとつでも流してやりたい。なんで戻ってくるんだよ。とっくにさよならしたはずなのに。すれ違うだけで、苦しくてしょうがないんだよ。

でもさ、やっぱり会えるとなんだかんだ嬉しいんだ。色々とひどいことを言ってしまってすまない。謝るよ。本音を言うと、どこにいたの、探してたよ、って感じなんだ。実のところ、君に会って心が震えているうちは、僕はまだまだ大丈夫なんじゃないかなって思ってる。素直だろ。だから、忘れないように君のこと、君に会ったときのことを書いておくよ。できるだけ、いつまでも覚えておきたいから。

僕はといえば、すっかり「僕と書いて愛」とは読まなくなってしまったよ。ああ、そう。彼は、相変わらず。君なら、そんなの前前前世から予想していたかもしれないけど。でも、僕も、愛にできることはまだあるんじゃないかとは考えているよ。きっとそれはいくら汚れてしまっても変わらないはず。と、思いたいけど、まあ、これからどうなるかわからないよね。ただ、愛は今でも二日酔いだけは防いでくれないし、治してもくれないよ。これも相変わらず。愛がなんだ。うるせぇバーカ。

文・西川タイジ

1986年山形県生まれ。『トーキョーブンミャク』運営。肩書きは特にありません。好きに呼んで下さい。編んで書いて読んで飲んで観て聴いて泣いています。

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「部室」ということばを聞くと心臓からきゅんと音が聞こえます。高校時代はソフトテニス部に所属していて、下手くそで全然楽しくなかったんだけれど、ソフトテニス部の部室のことは好きでした。歴代の先輩たちが置いていったラケット、手作り感あふれる木のベンチ、品の無い落書き。点在する物はゴミなのかゴミじゃないかすら分からず、所有者も不明で、そもそもいつからそこに存在しているのか分からない。すべてが部室の構成要素としてはかげがえのないものであるように見えて、でも何かがなくなっても決して気づかないだろうという予感もある。狭くて雑多な空間の中に、時空を超えてたくさんの人たちの残り香が残っていてまるでいつまでも終わらない物語を読んでいるような感覚があります。

2021.07.05 / / コラム

映画館に行けなくなった。数字でしか知ることのない、目に見えない病気の脅威を改めて実感した。なんともお気楽な話で大変恐縮なのですが、娯楽だって立派な必要最低限だ。

しばらくして、映画館には行けるようになった。そもそも映画館は感染リスクの低い娯楽施設である。納得だ。しかしまだ本調子ではない。席数を制限する劇場もあり、なによりレイトショーが全然やってない。

贅沢かもしれない。けれどやっぱり僕はレイトショーに行きたい。

2021.07.02 / / コラム

(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

夏。緑と青空、セミの声と氷が溶けてグラスの中で傾く音、雨上がりのアスファルトの匂い、山下達郎の歌声。ぼくは日本の夏が大好きだ!

そんな「夏」というアウトドアなイメージに対して、真逆のインドアなイメージのインターネットの世界をぶつけて混ぜ合わせ、リンクさせて物語を作り上げた作品が細田守監督の『サマーウォーズ』(2009)である!

2021.06.18 / / コラム

IMDbより

一度だけ、「愛してる」と言った。冗談で。途端に身体と顔は燃え上がり、心臓は壊れたように騒ぎ出した。それ以来、言えない。「愛」という言葉は理の外にあるみたいだ。誰に言ったのかも覚えていない。この人に言ったかなと思う人に電話して聞いてみたが違った。「あなたに愛してると言いましたか? 」と尋ねるのは恥ずかしくて、「あー」とか「うー」とか言って分かってもらった。なんという不誠実さ! ともあれ、それくらい適当に言った。

とにかく、僕は逃げた。

「誕生日おめでとう。何歳になったの?」
「わ〜ありがとうございます。29歳になりました……」
「えっ、もうそんな歳になるっけ?(笑) やばいね(笑)」

年明けめでたい空気が残る中で、不意に目の前で起こった会話だった。

23歳を過ぎた頃から、周りは優しく危機感を摺り込んできて、そして当事者の私たちはしきりに確かめ合うようになる。「そろそろやばいかな?」なんて。

変わらないままいるなど、許されないみたいだ。

2021.05.07 / / コラム

(C)2020「私をくいとめて」製作委員会

高校からの友人たちとオンライン飲みをしていたときだった。オンライン飲みあるある:終わり方がわからなくてずるずる長くやってしまう。あのときも床にあぐらをかいて座って腰を痛めながら、盛り上がりのピークも超えたのにゆるゆるとしゃべっていた。

最近見た映画の話になった。ちょうど1回目の緊急事態宣言が解除されて映画館の営業が再開したころで、ずっと期待していた『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を映画館で見ることができて喜んでいた。

モニターには僕を含め4人の顔が写っている。男女2人ずつ。そのうち女性2人と僕の3人が『若草物語』を見ていた。「どうだった?」と問われた僕は、

「めっちゃおもしろかった。すごいアツかったよね」

と答えた。それを聞いた女性2人がどういう反応をしていたのか、僕はあまり覚えていない。仮想空間には共有できる空気はほとんどない。だから僕が覚えているのは僕の部屋の空気だけで、それは何かを避けて当たり障りのないことを言ったときの空気だった。でもその空気を覚えていることも忘れてしまっていた。

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