I’m back. Omatase. 

ヒト畜生の映画評 |
POV映画を8本digる

ヒト畜生です。駄作が多いと言われるPOV映画の隠れた名作を紹介します。

このPOV手法は通常より臨場感が出て低予算で作れることからホラー映画にてよく使われる手法です。ただ、その低予算からあまりにも駄作が量産されており、ファンからはもういいよみたいな空気が流れているのが現状。

そんなPOV映画の隠れた名作を紹介します。

P プリティーで
O おませな
V ババア

みんなついて来いよ!(※)

※編集部注:

違います。

POVは「プリティーで おませな ババア」の略ではありません。Point of View, つまり「視点」のこと。転じて一人称視点で作られた映画のことをPOVと呼びます。悪しからず。作中に登場人物としてカメラがあり、その映像を我々が見る、または一人称視点で主人公の視点で話が進むのが一般的。

また、この記事はかつてフラスコ飯店のnoteで連載されていたものを再編集してお届けしております。

①『テイキング・オブ・デボラ・ローガン』(2014)

IMDbより

大学生がアルツハイマー病の卒論を書くためにとある老婆を取材する。老婆の生活を撮影するために部屋中にカメラを設置して観察する。老婆ワクワク観察映画。

他のホラーと画一的に異なる点として、通常のホラー映画ならば老婆が奇行を恐怖的に演出するがこの映画はそんな野暮ったいことはしません。全部アルツハイマーなんだもんで片付ける潔さである

「老婆が深夜に部屋中を彷徨ったり廊下を全力ダッシュしたぞ!」
いやいやアルツハイマーなんだもん 

「深夜に庭を掘り始めて連続殺人鬼の凶器を掘り起こしたぞ!」
いやいやアルツハイマーなんだもん

「老婆が瞬間移動し始めたぞ!」
いやいやアルツハイマーなんだもん

「老婆が少女を人質に閉じこもったぞ!」
いやアルだもん

「老婆が蛇に化けて少女を飲み込んだぞ!」
いアん

いい加減にしろ。

ツッコミどころ満載のホラーファンにはたまらない一作です。

②『コンジアム』(2018)

(C)2018 showbox and HIVE MEDIA CORP ALL RIGHTS RESERVED.

量産されたPOVホラーの中でもダントツでクオリティの高い一作。

設定や演出に関しては他のPOVホラーと変わりないが面白い。コンジアムなんと製作国の韓国ではアベンジャーズエンドゲームの10週連続興行1位を打ち破った作品である、本家マーベルもまさかPOVホラーに負けるとは思わなかっただろう。

本作の内容については、世界7心霊スポットの一つコンジアム精神病院でユーチューバーが生配信するというものです。

そもそも世界7大心霊スポットを皆さんご存知だろうか。

・チェルノブイリ原子力発電所跡
・メキシコ人形島
・おなじみ富士の樹海
・コンジアム精神病院

覚えているのでこの4つである こういうものは七不思議と一緒で揃わない方が怖いのです。

このコンジアム精神病院にてユーチューバーが生配信するという、ありきたりなストーリーではあるが、人感センサー付きの監視カメラを設置して、何も写ってないのにカメラが反応する等POVならではの演出もあり結構凝ってる アベンジャーズ倒しただけある。

とにかく怖いPOVホラーが見たいならコレです。

③『トロールハンター』(2010)

(C)2010 Filmkameratene AS Alle rettigheter forbeholdes. All rights reserved.

どんなものでもそれを象徴とするものがある。音楽といえば「ビートルズ」、絵画といえば「モナリザ」、お笑いといえば「ダウンタウン」。

ではPOV映画は?

答えはそう『トロールハンター』だ。

これだけで言葉は充分であるが折角なので内容を説明しよう。西洋に存在する「トロール」と呼ばれる10メートルほどある巨大な化け物を狩る謎の男の話である。まず、この映画は衝撃的な文言から始まる。

「この映像は当局に送り主不明で送られたビデオを独自に編集したものである」

「このビデオを専門家に鑑定してもらったところ本物であることが確認できた」

「この映像を公開することによって国から何らかの抑圧を受ける可能性があるが、国民の知る権利に則って公開することとする」

そう、お気付き頂けただろうか、この映画は「実話」なのである。話は大学生クルー達が卒論のため熊の密漁のドキュメンタリーを撮るところから始まる。大学生クルーの卒論設定多いな。

いや、「設定」ではない実話。実話なのだから。密漁を追って怪しい男を尾行すると、なんとその男が森の奥で10メートル近い巨人と銃撃戦を繰り広げているではないか!

その男にインタビューするとその男は国公認のトロールハンターだったのである!

トロールを国はひた隠しにしてたけど、トロールハンターの仕事キツすぎ、福利厚生終わってる、残業代出ないとかでトロールハンターの密着取材させてくれることになったよ!

実話である。

あまりにも映像の迫力から緊迫感が伝わってくる。そして視聴者の我々もトロールの実在を知ってしまい国から消されるのではないかという焦燥感が襲ってくる。

見たいものだけ見るのではなく、たまには世界の真実に向き合ってはいかがだろうか。

『トロールハンター 』アマゾンプライムにて200円で絶賛レンタル中!!!

④『ハードコア』(2015)

(C)2016 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

POVというと大抵ホラーだったり戦争映画であるが、このハードコアという映画やってしまいました、なんとPOVアクションでございます。

一人称視点で爽快アクションが楽しめるのである、これはもう「見る映画」ではなく「やる映画」なのだ。(昔のゲームCMの謳い文句をパクりました)

一人称視点でひたすらやりたい放題やる映画。

火炎放射機をもった男に追いかけ回されたり、ヘリコプターから落とされ空中300mからパラシュートなしで落ちたり、刀一本で戦車と戦ったり。小学生の時に道徳の授業中暇すぎてずっと脳内で考えていたことを追体験できる一作です。


しかもこれただのアクション映画ではなく、キャラやストーリーもかなり良い。

超能力者の悪の親玉、何故か助けてくれる全員「ビリー」という名前の男たち、エロお姉さん二人組など、こんな奴らと好き放題できるのだ、しかもストーリーに至っては最後に大ドンデン返しもある。なんだこれはもっと話題になってもいいだろ 。

こんなにも最高な映画があまり売れなかった理由としてマジで酔う。ひたすらに酔う。その一点のみが原因で天下を取れなかったといっても過言でない。

とにかく見てほしい。見ないという選択肢はない。

酔うけど。

⑤『Focus』(1996)

私の最も好きな邦画です。96年に公開された日本最古のPOV映画といってもいいだろう。隠れた名作というかもう隠れすぎてて、引っ越しの片付けしててタンスどかしたら壁の隙間から5年前に別れた彼女とのプリクラ出てきたわってくらい隠れた名作です。

ストーリーとしては、盗聴マニアの主人公にテレビ局が密着取材をするというものである。盗聴といっても僕たちの想像する盗聴と少し違って90年代のためトランシーバーみたいなもので専用の機械があれば他人の電話がランダムに盗み聞き出来たらしいよ!

そして取材クルーと一緒に盗聴してたらたまたまヤクザの会話を盗み聞きしてしまい、拳銃の隠し場所を知ってしまう、そこから話は思いもよらぬ展開へ――。

マジでこれは凄いですよ、こんな凄え邦画あったんだってなります。そら、プリクラ出てきて「ズッ恋!」とか書いてあるよへへ……。みたいな気持ちになりますよ。ええ。

行き過ぎたマスコミやTVカメラの暴力等、当時の社会風刺からの最後どんでん返しの怒涛の展開は脚本がお見事すぎる。POVフェイクドキュメンタリーの最高傑作だと思ってます。

⑥『ヴィジット』(2015)

(C)Universal Pictures.

エクソシストでお馴染みシャマラン監督が何とPOVに殴り込みです。

シャマラン監督といえばカメオ出演大好きおじさんで親しまれていますが本人がインド系のためモロバレであり1発で「あ、監督出てきた」ってなります。かわいいね。

こちらのヴィジットという作品、流石名のある監督が撮っているためPOVといえど酔いません、目に優しいです、そして単に予算がないからPOVではなくPOVでしか表現できない演出と雰囲気。そしてエクソシストばりのどんでん返しとかなり良いです。

それに真面目に映画するのが疲れたのか謎のラップパートなどギャグ要素等々かなりカマしてくる映画なので是非見て頂きたいです。

⑦『武器人間』(2013)

(C)2013 MPI MEDIA GROUP

僕は「好きな映画は何?」と聞かれるとノータイムで「武器人間」と答えて微妙な空気にすることでお馴染みの『武器人間』人間です。

まぁなに、天才博士が武器と死体をくっつけて人間を襲わせるだけの映画です 好きでしょこういうの。もうね、武器人間の何がいいってね、そらもう武器人間ですよ。皆さんは武器と人間を合体させるなら何をくっつけますか?

ライフル銃? ガトリング? ロケットランチャー?

粋じゃないですね。そんなこと天才博士はいたしません。

登場する武器人間は全部槍だったり鎌だったり。はたまたプロペラとか調理器具など武器(?)みたいなものまで、まぁジョン・ウィックが鉛筆で人を殺すので何だって武器といえば武器です。

兎にも角にも登場する武器人間全てが機能性よりもビジュアル重視なんですよ。まぁ武器人間展覧会です。ストーリー?ないですよ。そんなもんは邪魔です。ラストは爆破オチですし。

でもね、たまに良作映画を見ればみるほど自分のステータスになると勘違いしてやたら青白い綺麗な雰囲気映画ばっか見てる奴いるじゃないですか

そういう人達には一生武器人間の面白さなんて分かんないんだろうなって。そう思いながら今日も胸を張って「好きな映画は武器人間です」そう言い続けています。

⑧『VH/S ネクストレベル』

(C)2013 8383 PRODUCTIONS, LLC

この映画を見た後に率直に感じたのは「これからのホラー映画界は明るい」の一つでした。この映画はPOVホラーの短編集で4人の監督が一本20分ほどの動画を担当しています。そもそも皆さんホラー映画ってどういう風に生まれるか知ってますか?

まず一つのアイデア(TVから飛び出てくるとか)があってそれを極限まで90分という時間に引き延ばすか、そういう勝負になってくるんですね。だからまぁ従来のB級映画ってのはアイデア一本で90分だから妙な引き伸ばし(内輪揉めや別行動して一人ずつ死ぬ等)ストレートつゆを10倍ぐらいに薄めてどんどん粗悪になっていっちゃうんですよ。

しかしこの「VHSネクストレベル」は一発アイデア20分勝負のため6倍濃縮をそのまますするような濃厚で大満足の容量なんですよ。4本の内容は

 ・幽霊
 ・ゾンビ
 ・カルト宗教
 ・宇宙人

の4つなのですが、中でも「ゾンビ」と「カルト宗教」の2本はこれ90分見てえぞ!? と思うくらいズバ抜けて出来がいいです。

特にゾンビの話は頭にカメラをつけた人がゾンビになってしまい 人間を襲う側視点で進み、車に引かれたり生きた人間を食べる体験ができます!めちゃくちゃ斬新アイデアでなんて濃厚で芳醇な‘かえし‘なのこれ水で薄めるだけで上品なスープなるわいなってなります。

この『VH/Sネクストレベル』一本の映画で4、5本のホラーみたかのような満足感、また1本20分のためテンポも良く飽きさせない見たこともない演出の数々、ホラー映画ファン大満足です これを見ないという手はないです。

セブンイレブンのコーンマヨパンってあるじゃないですか、あれって昔めちゃくちゃ食べずらくて、一口食べるとボロボロとコーンが落ちていっじゃってたんですけどアレを大口で貪るのが好きだったんですね、でも最近細長く食べやすいように変わってて「女性のために食べやすいよう改良しました!」って書いてありました。

改悪だバカ。

ぼくとしてはもっとあのコーンをボロボロこぼしながらも、こう、コーンよ私を虐めて!ってなっちゃって。

春眠 コーンマヨに虐められたくて
以上 小野寺でした。(※)

※編集部注:

この記事の筆者のヒト畜生さんは連載の途中で「小野寺」に改名されました。なぜこのタイミングで? その答えこそ、POV映画の中に隠れているのかもしれません。知らんけど。

(店主)

 文・小野寺(旧 ヒト畜生)
編集・川合裕之

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