バスに揺られている。窓から柔らかい光が差し込んで、まるで自分が豆苗になったみたいな、のびやかでふくふくとした気持ちになる。程よくぼーっとしながら音楽を聴いていると、ふとある歌詞が耳に残り、曲を巻き戻して最初から再生する。豆苗のわたしは人間に戻り、「ああ、つかまえたんだ」とわかってしまう。さあっと全身に鳥肌が立ち、なんだか目頭が熱くなる。
何万回も聴いたはずの曲が何を言っているのか、突然わかることがある。一生懸命生きていたご褒美みたいな、でももう「わかる前」には戻れなくてもったいないみたいな、そんな瞬間。