I’m back. Omatase. 

和島 咲藍

和島 咲藍

1997年土曜日生まれ。結果オーライの申し子。わたしは気さくです。

和島 咲藍の書いた記事

©BUENA VISTA PICTURES

>フラスコ飯店からのお知らせ<

中学3年生以来、ヒールのある靴を履いたことがない。持っていないから、デートでも大学の入学式でも履かなかったし、就職活動はスーツ一式を揃える前に辞めてしまった。

特に何かの主義主張があるわけではない。わたしの好きな服の系統にはヒールのある靴はそぐわないし、24.5cmで甲高幅広の足に合わないから履かない。ただそれだけ。

でも、世の中にはわたしの「ただそれだけ」を渇望する人がいる。

青い靄がかかった桟橋の上で真っ赤なハイヒールを履いた少年は、まるで自分の魂を解放するように、うれしそうに踊る。

2021.02.03 / / わた藤

お好み焼き屋で、父親がジンジャーエールを飲んでいる。一口、もう一口と飲んで、ふと「やっぱりコーラにすればよかったなあ」とぼやく。

わたしはいてもたってもいられず、半分泣きそうになりながら「残りわたしが飲むからコーラ頼んだほうがいいよ」と言う。

お父さんに何1つ心残りがありませんように。

父は、変なタイミングで急に必死になるわたしの顔を、不思議そうに眺める。

あの頃のわたしは、「わたしを無くしても父でいられる」ということを、全然わかっていなかったのだ。

2020.12.25 / / わた藤

あなたにとって、2020年はどんな年だっただろうか。突然猛威を振るった新型コロナ感染症に東京オリンピックの延期、外出自粛の日々。思うところはいろいろあるけれど、わたしにとって外せない2020年の象徴は「BUMP OF CHICKEN」だった。

世間を、特に BUMP OF CHICKEN ファンを騒がせたニュースが2つある。

1つは、Vo.Gt. 藤原基央の結婚発表。バンドのレギュラーラジオである『PONTSUKA!!』 内で自身の口から公表し、インターネット上では祝福や驚き、ショックの声など、様々な反応が見られた。

2つめは、Ba. 直井由文の不倫スキャンダル。結婚を隠して女性と交際していたことが元交際相手の女性によって週刊誌にリークされ、こちらも大変な騒ぎとなった。メンバーはラジオと書面でコメントを寄せ、直井は活動を休止、当面は残りの3人でバンド活動をすることになった。

もちろん、多くの人にとっては、これらは毎日世に放たれる様々なニュースの1つに過ぎない。1週間もすれば世間話にもならない、いつものありふれたゴシップだ。

だけどわたしは、特に直井の不倫報道にものすごい衝撃を受け、それはこの記事を書いている現在に至るまで、ずっと尾を引いている。わたしが好きな BUMP OF CHICKEN というバンドが一体どういうバンドで、これから彼らの曲をどんな顔をして聴いていいのかが、さっぱりわからなくなってしまったのだ。

2020.08.31 / / わた藤

高校3年生の時、家庭の事情で気を病んで1年半に渡って不登校気味だったわたしを絶望させた言葉がある。担任の先生が言った「でもあなたはいつか自分で働いて、自分で生活しなくちゃならない。そのためにはちゃんと大学に行かないといけないのよ」という言葉だ。

薄暗い進路指導室で、先生の鋭くも暖かい視線がおでこに突き刺さっていた。わたしはなんとか「じゃあ、破滅します」と答えた。先生の深いため息がわたしの前髪を揺らした。

CAUTION!!

これはイラストレーターの逆襲です。

WEB記事において、“アイキャッチイラスト”とは、記事ありきのイラストです。

「ライター陣ばっかり好きなもの好きなように書くのずるいよ!」

そんなイラストレーターの一声から始まりましたこの逆襲。

イラストレーターが描きたいものを自由に描いて、それに沿ってライターが執筆する。これは、記事ありきのイラストというこれまでの制作の流れを止め、イラストありきの記事にするという、超我儘企画です。

詳しくは
私、フラスコ編集部に逆襲します。

第二回はライター・和島咲藍に逆襲!

18:07

 『そろそろお祝いのご飯どうですか? 8月1日と2日の週末、どっちがいい?』

 遅い梅雨明けが見えてきた7月中旬のある日、母からのメッセージを受信した携帯電話がぶるっと震えた。
 「どうですか?」と尋ねておきながらこちらが「行く」と答える前に日程の確認をしてくる強引さが、いかにも彼女らしかった。

2020.07.07 / / わた藤

突然だけど、わたしには友達が少ない。生まれつきそういう体質なのだ。

「一人でも平気そうな顔をしている」とか「自分の世界持ってそうだから話しかけにくい」とよく言われるし、わたしが各種SNSで発信しているような事はいわゆる「考えすぎ」で、「考えない」人たちから見ればそれらは気持ち悪く、「考える」人たちのことは萎縮させてしまうようだった。

でもそれを気に病むことはない。わたしには「赤い星」が付いているから。

2020.06.05 / / わた藤

自転車のうしろに彼女を乗せて、陽が落ちきった街を走る。耳には片方ずつ分け合ったイヤホンが刺さっていて、ふたりで同じ音楽を聴いている。彼女を学校から駅まで送るたった5分たらずの道のりで、わたしたちは毎日、流れ星になっていた。今が未来だった頃の話だ。

2020.05.11 / / わた藤

バスに揺られている。窓から柔らかい光が差し込んで、まるで自分が豆苗になったみたいな、のびやかでふくふくとした気持ちになる。程よくぼーっとしながら音楽を聴いていると、ふとある歌詞が耳に残り、曲を巻き戻して最初から再生する。豆苗のわたしは人間に戻り、「ああ、つかまえたんだ」とわかってしまう。さあっと全身に鳥肌が立ち、なんだか目頭が熱くなる。

何万回も聴いたはずの曲が何を言っているのか、突然わかることがある。一生懸命生きていたご褒美みたいな、でももう「わかる前」には戻れなくてもったいないみたいな、そんな瞬間。

(C)ORIGIN PICTURES (X&Y PROD) LIMITED/THE BRITISH FILM INSTITUTE / BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2014

「望むと望まざるとにかかわらず、大阪大学に入学したみなさんは色んな意味で “社会のエリート” になる人たちですから “エリートでない” 人々のことも責任を持って考えてもらえたら……」

教授は広い教室をぐるっと見回して、大きくうなずきながら、そう言った。

大学に入学してすぐのオリエンテーション、わたしの期待に膨らんだ胸は、一瞬でしおしおになってしまった。プシューーー

わたしはとにかくショックだった。「社会のエリート」になるためじゃなく、学問をしにこの大学に入ったのに。どう考えても自分のことだけで精一杯なのに。しかも、わたしが望むと望まざるとに関わらず? わたしの人生なのに? どうしてそんなひどいことが言えるんだろう? そんなの暴力じゃないか。勝手に人の選択に意味を見出して聞こえのいいラベルを貼りやがって、ふざけんなよ。

IMDbより

ある夜、ふとゴッドタンの “腐り芸人セラピー” を観ていると、お笑いコンビAマッソの加納さんが切実な悩みを語っていた。「お笑いをやりたくてこの世界に入ったのにテレビでは女性としての意見しか求められない」。女芸人は男性の芸人とは違って、芸そのものの面白さではなく、イケメン俳優がスタジオに登場した時の「黄色い悲鳴要員」として、または「NGなしの赤裸々な恋愛トーク要員」としての立ち振る舞いだけを求められている。しかし、それは私のやりたいことではない。私は「芸人」なのだ、と。

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