Te wo Arai mashou.

『ミスター・ガラス』

(C)Universal Pictures All rights reserved.

ユニバース、ユニバース、ユニバ―ス。

あれも?これも?それもそうなの?

知らないよ。全部見てられないよ。そんな声が聞こえてくる。わかる。そりゃそうだ。普通の人はそう言うのが筋でしょう。こんなのに付き合ってるの僕らみたいな一部のおかしなファンだけですよ。

MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)がようやくひと段落したと思ったらゴジラも実はユニバースものだし。そういえばDCも対抗してユニバースをものを作っていますよね。まあ最初にDCを意識したのがマーベルだったからこれはお互い様だとして。そもそも件のMCUも、あのディズニーがこんなに繁盛している店をそんなにすぐに畳むようには思えない。見てくださいよ、 “TOY STORY” なんてこの夏は4に突入したし、スターウォーズも何だかんだで全然終わらないじゃないですか。そうそう、MCUもフェーズ4の製作を正式に発表しました。

そして例に漏れず今回取り上げる作品『ミスター・ガラス』もまた「ディズニー傘下のユニバースもの」なのですが、どうか懲りずにせめて話だけでも聞いて欲しいのです。

冷静と情熱と、サイエンスとサイコパスのあいだ

◎自警団活動で「監視人(オーバーシーヤー)」と世間で噂されるデヴィッド・ダン(演:ブルース・ウィリス)

◎24の異なる人格を持つケビン( 演:ジェームズ・マカヴォイ)

◎類まれなる頭脳を持つイライジャ・プライスことミスター・ガラス (演:サミュエル・L・ジャクソン)

この3人が「精神病院」へと集められ強制的に治療を受けさせられます。彼らの特殊能力は科学や医療といった物差しで真っ向から否定されてしまい、「妄想」や「思い込み」なのだと不承知されます。

喉元に科学を突き立てられてまで、自分の非科学を認めることができるか。そこまでの力説を覆すほどの自信もない。次第にアイデンティティが揺らぎ、科学と非科学の狭間の境界が溶解してゆく。それは彼らだけでなくそれを目撃している僕たち観客もまた同じです。物事の基準を判別する三半規管はもはや機能していません。二転三転する価値観にぐらりと酔わされてしまうのです。「インセプション系あと出しじゃんけんモノ」なんてあだ名でカテゴライズしてあげても良いかもしれません。

文脈、コード、常識――。呼び方はなんだって構いませんが、そうした類の「基準」から私たちを解放してくれるのがこの映画なのです。

万一に備えて観るのです

もしも万一のときに備えて、なるべく早く本作を観ることをオススメします。せっかく今を生きているのだから、今観ておかないのはもったいない。

というのも例えばこんな話。ダースベイダーが何者だったか。僕らは既に知っている。映画を見る前からなんとなくね。知らずに鑑賞できたならもっと映画を楽しめただろうに。――と、このような類の「万一」に備えるのです。

このユニバースものは、監督曰く続編はないとされていますが、この先まったく無いなんて誰も断言できません。もしもシリーズが再開されてしまったら?そうなればきっとまた素晴らしい作品ができることでしょう。大きな炎は、立てる煙もまた大きい。

先述の通り、本作は「ディズニー傘下のユニバースもの」です。続編はない。その言葉は果たしてどこまで信用に足るのか。アベンジャーズはこれからも続き、トイストーリーは4になりました。『アラジン』や『美女と野獣』、『ムーラン』など実写に生まれ変わった作品も数知れず。繰り返します。続編はない。彼らを目の前にして、この言葉は果たしてどこまで信用に足るのでしょうか。

『ミスター・ガラス』の作中で議論される科学と非科学の境界線の、どちらに結論が転ぶのか知ってしまう前に何とか鑑賞していただけたらと思います。「知ってしまって」からじゃもったいない。

続編が無いなら無いで、それもまた危ない。日夜公開されて更新される作品群に埋もれてしまうかもしれない。見ないまま忘れてしまうかもしれないのだから。

解説『ミスター・ガラス』(2019)

監督: M・ナイト・シャマラン
出演:ジェームズ・マカヴォイ, ブルース・ウィリス, サミュエル・L・ジャクソン

先述の通り、『アンブレイカブル』(2000), 『スプリット』(2016)の続編。3作がそれぞれユニバース的に繋がっています。

監督はインド系アメリカ人のM・ナイト・シャマラン。あの映画や、あの映画の製作にも携わっているビッグネームですが、今はあえて伏せておきます。『ミスター・ガラス』をまだ見てないし、監督のこともよく知らない――というのであれば是非とも全て見た後に検索して知ってもらえれば幸いです。

 文・川合裕之
編集・和島咲藍

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川合 裕之 Written by:

95年生のライター/ 編集者。長髪を伸ばさしてもらってます。 フラスコ飯店では店主(編集長)をしています。

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