みぎ向け! シウマイ弁当

Last updated on 2019.11.06

これもマスト?あれもマスト?

世の中にはコンテンツの品数が多すぎる。

どんなカルチャーを食べてよいかわからないと悩まないよう、フラスコ飯店が食べ合わせの良い「定食」を自信をもってご提案いたしましょう。

今回のテーマは「シウマイ」。

シウマイを正しく食べ続けるのに役立ちそうな映画を揃えてみました。 あいにく今日のお弁当は映画ばかりですが、味には自信がございます。

「みぎ向け、シウマイ弁当」の献立

・映画『帰ってきたヒトラー』
・映画『シャザム!』
・映画『THE WAVE』

『帰ってきたヒトラー』(2015)

(C)2015 Mythos Film Produktions GmbH & Co. KG Constantin Film Pro duktion GmbH Claussen & Wobke & Putz Filmproduktion GmbH

現代にヒトラーが生き返ったら?そんな小学生の思い付きのようなスタートラインから始まる、大人のブラックコメディー。

楽観して笑っていると、気付けば引き返せないところまできてしまう、という後戻りできない一方通行のストーリーに身を預けてみてください。価値観を揺さぶるジェットコースターのような映画です。なにもそんな身構えなくても大丈夫。さらっとカジュアルに楽しめるコメディなのですから。

「自分はヒトラーだ」と大真面目に主張するヒトラーですが、その迫力が大きくなればなるほど、「そういう芸人なのだ」と周囲は誤解。存在そのものが不謹慎であるはずの男を、受け入れてしまうのです。

テレビ出演の際には「ユダヤ人ネタだけは笑えないからやめてくれ」と釘を刺されて「ああ、笑いごとではない」と鋭い眼光で即答するシーンはまるで、当事者たちだけは至って真面目なのに俯瞰すると気の抜けたシチュエーションを楽しむ東京のコントみたいでもあります。硬いだけの内容ではなく、ユーモアに満ちたコメディ映画なのです。2018年には東京外国語大学の学園祭の外国語劇の演目にもなりました。

ヒトラーは軍事力で権力を掌握したのではなく政治力を駆使して選挙で選ばれた人間という事実になぞらえた骨太のキャラクター造形に注目です。たしかにその場その場で言っていることはもっともらしいから不思議です。だからこそ耳を貸してはいけません。

冗談でも右手をあげて「あの挨拶」をしないようにお願いします。

『帰ってきたヒトラー』(2015)

「ユダヤ人ネタは笑えない」のエピソードはこの予告にも挿入されています!

監督:ダーヴィト・ヴネント
脚本:ダーヴィト・ヴネント, ミッツィ・マイヤー
原作:ティムール・ヴェルメシュ
製作 ラース・ディトリッヒ, クリストフ・ムーラー
出演:オリヴァー・マスッチ, ファビアン・ブッシュ, カッチャ・リーマン, クリストフ・マリア・ヘルプスト, フランツィスカ・ウルフ
音楽:エニス・ロトホフ

『シャザム!』(2019)

(C)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

「見た目はオトナ・中身はコドモのスーパーヒーロー」。日本版のコピーではそんなふうに題されたヒーロー映画をご紹介します。

母親を見つけるという目的のためなら危険なことや違法な行為だって辞さない14歳の少年ビリー・バットソンが、ひょんなことからスーパーヒーローに。「シャザム!」と叫べば猛々しい大人の姿(演じるザッカリー・リーヴァイは映画公開当時38歳)になり、様々な魔術が使えるようになるのです。

しかし、彼はまだまだ未熟な少年。ちょっと人助けをして感謝されれば天狗になり、そうかと思うと魔術で自販機からジュースを盗んだり。この手の映画ではお決まりといえばお決まりの調子の乗り方ですが、彼もまた例外なく「強大な力」に溺れてしまいそうになるのです。見た目はオトナ、中身はコドモとはまさに言いえて妙です。

ヴィランとして立ちはだかるのは、映画「キングスマン」シリーズではマーリンを演じたマークストロングが演じるDr.サデウス・シヴァナ。ヒーローもとい勇者に選ばれなかった悲しい過去をひきずって、憎悪の感情だけをモチベーションに魔物の力を振り乱します。

ビリーたちは自分のみならず市民の命をも懸けた過酷な戦いを経て、今やもう立派な大人になりました。「見た目はオトナ・中身はコドモ」という日本版キャッチコピーは映画の最後には完全に逆転します。見た目はコドモでも、中身は立派な大人になったのです。

今日はシャザムのキメ台詞をご紹介しましょう。

“what good is power, if you got nobody to share it with”.

「意味ないよ、分かち合えない力なんて」

彼は厭悪を晴らすために力を独占することを否定し、人を助けるために力を分権することを説いたのです。子どものままだったのは、ヴィランであるシヴァナの方だったのかもしれません。単に年を重ねるだけでは成熟した大人にはなれないのです。

軍事力や経済力、または名声、あるいは権力。並々ならぬ力を私怨と私欲のためだけに使い、私怨に飲まれて力を暴走させてしまう大人を大人として認めてはいけません。

私たちもはやく大人のヒーローになって世界を救おうではありませんか。

それではご唱和願います。せーの、Shazam!

『シャザム!』(2019)

予告の限りはコミカルなポップコーンムービーなのですが、案外泣けます。なんたって2時間超の骨太映画なのですから。

監督:デヴィッド・F・サンドバーグ

出演:アッシャー・エンジェル, ザッカリー・リーヴァイ, ジャック・ディラン・グレイザー, マーク・ストロング ほか

監督:デヴィッド・F・サンドバーグ
出演:アッシャー・エンジェル, ザッカリー・リーヴァイ, ジャック・ディラン・グレイザー, マーク・ストロング ほか

『THE WAVE』(2008)

(C)2008 CONSTANTIN FILM VERLEIH GMBH

シャザムはバットマンやスーパーマンと同じD.C. の作品です。今後ユニバースへ合流していいくことでしょう。ヒーローの団結ほど心強いものはありません。しかし、「団結」とは鋭い刃物。使い方を間違えては大変です。大きな力の矛先がどこに向かうかは指導者にかかっています。

この『THE WAVE』という映画は、ある高校でナチスと同じ方法で組織をつくられていく様を描きます。最初は遊び半分でした。とある高校教師が、特別授業の一環として「ナチスと同じこと」を教室で再現しました。意外にも拍子抜けするほど簡単に生徒たちはまとまり、高い一体感を持つ厳格なクラスが出来上がります。しかし、総統である先生の手を離れて組織は自走。手に負えなくなってしまうのです。

この映画が示す事実は世にも恐ろしい現実。それは、「全体主義の統治」にはいくつかの簡単なメソッドがあるということです。つまり広義のファシズムは作れる、ということ。

実験では以下のようなことが義務付けられてます。リーダーの名前に「様」をつけて敬う。許可なく発言してはならない。「仲間」は助け合う。制服を絶対に着用すること、などなど。こうしたルールは窮屈そうに見えますが、いざ従ってみると一種の快感があるのです。

たかが映画と侮るなかれ。実はこの実験、1967年のアメリカで本当にあった話なのです。映画の原作であるノンフィクション小説は、現在でもドイツの学校で薦められるほど。そんな題材を緻密にリサーチし、実験の詳細を理解した制作陣によって丁寧に作られたのがこの映画です。

怖いのは、生来のカリスマ性さえ持っていれば、大衆を相手に権力を握り大衆を広義のファシズムへと転落させることは比較的簡単だということです。不勉強で学が無くてもカリスマ性は生まれます。それだけならまだ何とかなりそうなものです。なるほど、まだ大丈夫。でも、もし勤勉で学殖豊かなヴィランが現れたら?その人間にカリスマ性も備わっていたとしたら? 彼あるいは彼女が狡猾でないことを祈りましょう。

ファシズムに負けないように団結して平和を守りましょう。

それでは皆様またもご唱和ください。いいですか、いきますよ。

せーの、WAVE!

『THE WAVE』(2008)

日本語字幕の予告はありませんでしたが、もしたとえ言葉がわからなくても、そのひんやりとした異様さが伝わってきます。もちろんDVDや配信では日本語字幕付きでみることができます!

監督: デニス・ガンゼル
出演:ユルゲン・フォーゲル, フレデリック・ラウ, マックス・リーメルト, ジェニファー・ウルリッヒ ほか

いかがでしたでしょうか。手前味噌ながら素敵なお食事になったかと思います。

先ほどは “WAVE” とご唱和いただきましたが、不適切な取り組みでしたね。

口をそろえて組織の名前を叫ぶ。これは実は盲目的な団結の助けとなり大変危険であることが分かっています。大変失礼いたしました、お口直しに幸せなフレーズをご用意いたしております。

それでは最後にご唱和願います。

シウマイ弁当ばっか食う!
シウマイ弁当ばっか食う!
シウマイ弁当ばっか食う!

特に意味はございませんが、美味しそうな言葉は気分が良いでしょう?

いいですか、スマホの前のみなさまも、きちんと口に出して繰り返してくださいね。

シウマイ弁当ばっか食う!
シウマイ弁当ばっか食う!
シウマイ弁当ばっか食う!

すみません、お口直しにしては刺激が強すぎたでしょうか。過度に耳に残ってしまったかも。濁った促音は力強く、何度も何度も聴かされると脳にこびりつくのを忘れておりました。

まあ、知ってさえいれば不用意に騙されることはないのですが……。

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