I’m back. Omatase. 

そういやPerfumeサブスク解禁されたし、 “ナチュラルに恋して” の「キミの好きそうな映画」を映画オタクが特定しようじゃないのさ

ちょっと前の話、2019年9月18日にPerfumeのメジャー以降の楽曲がサブスク解禁となった。CD音源を持っていても、こういうニュースが入るとわざわざ配信で改めて数々の名曲を聴き直したくなる。新たな媒体でリリースされる意味はそういうところにもある(と思う。)

さて、件の『キミの好きそうな映画』とは3rdアルバム『JPN』の4曲目 “ナチュラルに恋して”の歌詞の一部。前後しっかり抜粋するとこうだ。

キミの好きそうな映画 / がんばって横で観るけど

ちょっと 眠たい / 肩を借りて眠る

ぼけっと聞いてると「あら素敵」なんてスルーしがちだが、ナチュラルに恋なんてしたことない映画オタクにすれば「おい、映画のタイトルは? てか寝るな、ちゃんと観ろ!」と言いたくなる。

気づけば街角でも楽曲がその部分に差し掛かるとそうブツブツ文句を言い、周りに白い目で見られかねないので、ここでどの映画を見ていたのか、勝手に決めてしまおうではないかという訳です。

がんばって観る映画とは?

まず、歌詞にあるこの女子が “眠いけど、がんばって” 見ているという点に着目したい。自分が好きな彼のために “頑張って”見ているということは、この映画は明らかにこの乙女の趣味の映画ではないのである。ちょっと自分にはよく分かんないけど、彼が好きそうだから頑張ってみている。大変微笑ましい情景が目に浮かびますね。

というわけで、頑張らずに見られる映画はここで除外される。その映画群は私の独断と偏見によれば、漫画原作の邦画恋愛モノやディズニー映画、 ジブリ映画など一般的に女子受けの高いとされている映画である。最近でいうとマーベル映画などもこの部類に入ってもおかしくないものと考える。マーベルを観る女子なんて10年前は考えられなかったですよねホント。

ここで映画オタクである私の独断と偏見で「眠たくなる映画」を掘り下げるとデヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』や伝説のカルト映画『死霊の盆踊り』、レフン監督の『オンリー・ゴッド』など数々の映画が浮かぶ。

キミは人気者だし不安にもなる……らしい

さて、次はこの映画を見ている男に着目したい。なんでも歌詞によれば人気者でひっきりなしにメールを受信する、大手商社の企業戦士ばりに働く携帯電話の持ち主であるということがわかる。

急がしそうにしている  キミの携帯電話
ちょっと 誰から メール届いているの?

なので、残念ながら先ほどの『マルホランド・ドライブ』や『死霊の盆踊り』などのラインナップに「そうそう!」と頷いたあなたの携帯電話はつぶれかけのカラオケ店の学生アルバイトくらいにしか働いていないだろう。だって私の携帯電話がそうなのだから。

つまりなにが言いたいかって、この曲の「キミ」という男はそんなコア層の喜ぶ映画なぞ見ている暇などないくらい充実した生活を送っているはずなのだ。

ここで一つ、「人気者の男」が見そうないわゆる「名作映画」の基準としてIMDb(インターネット・ムービー・データベース)というアメリカ最大手の映画サイトの高評価ベスト250にランクインしている映画のみに限定することとしよう。このランキングは、『アベンジャーズ / エンドゲーム』が49位にランクインしてるあたり、どうも古参の映画オタクたちばかりが集まっているわけではなく、広い層の意見を汲み取ってランキングを決めている感じがする。今回の趣旨に沿っていると思い、基準として採用することにした。

(参考:IMDb Charts Top Rated Movies )

せめてジャンルくらい絞りたい

さて、女子人気が低く、かつIMDbトップ250にランクインしている映画といってもまだ数は多い。ランキングを物色する前にジャンルくらいは絞っておこうと思う。私もいままでいろんな映画を見てきたが、歴史的に評価の高い名作の中にもちょっと(時にはかなり)眠たくなる映画は存在する。というか枚挙に暇がない。『2001年 宇宙の旅』(IMBd 高評価ランキング90位)や『惑星ソラリス』(ランク外)、スタートレック劇場版1作目(ランク外)などが個人的「ちょっと眠たくなる」映画だ。と、思い出すにやたらSF映画がそれに該当する。

これは偶然ではなく、SFの特徴とも言えるのではないだろうか。そもそもSFなんて「ガンダム」や「スター・ウォーズ」の登場前までは、かなりハイレベルなオタクが空想科学知識マウンティングを繰り広げるニッチで正直眠たいジャンルであったし、そもそもそうあるべきなのだから。「ソラリス」、「スタートレック」の2作がIMDbのトップ250に入っていない時点でなかなか危ない仮説のような気もするが、そんなことは気にしない。なぜなら俺はSF映画が好きだから。

また、SFは人気者の彼が好きな乙女にはちょっとしんどいジャンルではないだろうか。先述の表現をなぞると「がんばって」観るタイプの映画だろう。ただ、それこそ「スター・ウォーズ」を寝るような女だと決めてしまうともう2度とPerfumeが聴けなくなるほどこの女のことが嫌いになりかねない。そこは心優しい映画オタクが納得のいくちょっと眠いSF映画を探ろう。

人気者が “好きそうな”SFとは?

映画のジャンルはSFに決定した。人気者の彼が “好きそう”なSF映画(=条件としてIMDbベスト250にランクインしているSF映画)、かつちょっと眠たいSF映画、それすなわち今回の命題の答えになるという訳だ。

ここで、この記事の命題をツイッターに投稿していたことにより、そのツイートをみた細身のジェントルメン(当然映画オタク)からLINEが。核心にせまるタイトルが送られてきた。

IMBd高評価ランキング14位の『インセプション』だ。

「それ正解」感がすごい。なんというか人気者の彼が見そうな感じの超大作であるにも関わらずそれに付き合わされてる女子は寝ちゃって自分バージョンの「インセプション」を夢で見ちゃう感じが容易に想像できる。2時間半の上映時間もさることながら、夢の夢のまた夢の中で云々というところの説明が異様にややこしく “頑張って”見ている女子にはきついだろう。もし仮に隣で見ている彼がジョセフ・ゴードン・レヴィットなら枕がわりの肩をすっと抜き、起こしてくれること間違いないのだが。

それはそれで置いといて、なかなかの早さで答えが出たことに喜びつつ、多少肩透かしを食らったような気分でもう一度曲を聴いてみる。

ちょっと誰から メール 届いているの

メール?いやメールて。ガラケー文化感がすごい。気になってこの曲のリリース日を確認する。「ナチュラルに恋して」はシングル盤が2010年の4月14日にリリース。対する『インセプション』は2010年7月16日全米公開(日本公開は同年の7月23日)だ。この映画『インセプション』はこの曲の3か月も後に公開されているということに気づかされた。これでは曲中にインセプションを見ることは不可能だ。また条件が一つ増えた。なんであれ映画は2010年4月以前に公開のものでなければならない。ふりだしにもどった。

フィクサー中田ヤスタカ

個人的に『インセプション』が正解感MAXだったので、正直情熱も消えている。IMDbのランキングを眺めていても全然ピンとこない。「中田ヤスタカがタイムスリップしてインセプションを見たのではないか」とも思った。

と、ここまで書くまで私はこの「中田ヤスタカ」というフィクサーの存在を完全に忘れていた。そもそもこの男の趣味を探る他にこの曲の世界を知る術はないではないか!ここで私は中田ヤスタカの好きなSF映画こそ、この曲の「キミ」という男の “好きそうな映画”だと決めつける方向に希望を見出した。

試しに「中田ヤスタカ 映画」でググってみるたが、彼がサントラを手がけた映画の情報ばかり、ピコピコ音楽を作っている彼はSFマニアでもおかしくないのに……。ちなみに「中田ヤスタカ SF」でも有力な情報はなし。

Google検索の才能がない私は、仕事の合間に大宅文庫へ、そこで2012年の大昔に発売された週刊アスキー掲載の記事を発見。なんでも中田ヤスタカ氏の選ぶ「わくわく系テンション上昇音楽選」という記事。彼の気分上々↑な5曲が紹介されているのだが、やはり思惑通り『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のテーマだったりR-TYPEのサントラだったりSF好きであることに間違いはないようだ。ただその中でもこの決めつけコラムにうってつけだったのが、ヴァンゲリス作曲の “Pulstar”だ。

ヴァンゲリスといえばあのSFの金字塔である『ブレードランナー』のサントラを一手に引き受けたミュージシャン。つまりこの曲のいう「キミの好きそうな映画」は中田ヤスタカの好きなヴァンゲリスがサントラを担当した『ブレードランナー』なのではないかと。IMDbのランキングでも167位にランクイン。もちろん2010年以前に公開されている。なんなら中田ヤスタカ本当に『ブレードランナー』好きだろ。 “ナチュラルに恋して”もきっと『ブレードランナー』を見た直後に書いたに違いない。

「キミの好きそうな映画」は『ブレードランナー』だ

というわけで、「キミの好きそうな映画」は『ブレードランナー』に決定した。たしかに『ブレードランナー』はちょっと眠たい。「スター・ウォーズ」のハン・ソロでお馴染みのハリソン・フォードがスーパー人造人間を追う映画というと目も冴える感じがするが、そもそものコンセプトおよび実際のところはSF版フィリップ・マーロウ映画なのだと書くとフィルム・ノワール独特のダレ場感などからその睡魔の影を想像していただけるかと思う。

そもそもこの映画がVHSの発売後に何度も見てその良さを理解する人が増えたことによって人気が出たと評されることから、一見さんの睡眠欲を掻き立てることはなんとなく想像できるし、私自身もそうだった。

 現在異なる5バージョン(ワークプリント版・オリジナル劇場版・インターナショナル劇場版・ディレクターズカット版・ファイナルカット版)が視聴可能だが特にディレクターズカット・ファイナルカット版では劇場公開版にはあった主人公のデッカード(ハリソン・フォード)のナレーションが削除さてており、「これ今何してるの?」という声も漏れかける初見殺しのシーンも複数存在する。おそらく写真を謎の機械でズームしたり角度を変えたりストップと連呼するシーンの最中に、「ナチュラルに恋して」の主人公の女子は眠りに落ちてしまったのだと推測する。

ブレードランナーはパフュームの夢をみるか?

ここで、もう一つなぜ「キミの好きそうな映画」が『ブレードランナー』なのかをより説得力あるものに仕立て上げるためのもう一つトンデモ説を追加しよう。

そもそも “ナチュラルに恋して”というこの曲のタイトル、そしてサビは、『好きって言え』、『キスしろ』など不自然極まりなくレイチェル(ショーン・ヤング)に迫るデッカードに対する中田ヤスタカからのメッセージなのでは?という説だ。

元祖壁ドン(壁に女性をドンと押さえつけるやつ)までやってのけるデッカードに「おいちょっと待て、ナチュラルに恋して、ナチュラルにキスしろよ、レプリカント(作中に登場する人造人間)なんじゃあるまいし……あれ? ひょっとしてお前も……」と中田ヤスタカが画面に向かってぶくつさ言ったことが “ナチュラルに恋して”の始まりであり、デッカード=レプリカントなんじゃないかと疑い始めたきっかけに違いない。

解説『ブレードランナー ファイナル・カット』(2007)

監督:リドリー・スコット
出演:ハリソン・フォード, ルトガー・ハウアー, ショーン・ヤング

オリジナル劇場版は1982年公開。92年にディレクターズ・カットを発表、07年にファイナル・カットが発表された。この記事で指す「ブレードランナー」は主にファイナル・カットを指す。

あらすじ

2019年のロサンゼルス。レプリカントと呼ばれる高い運動能力と知性を備えた人造人間は製造から数年経つと感情が芽生え人間に対する反乱を起こしかねないため4年の寿命が設定されていた。彼らはオフワールド(地球外植民地)で奴隷として働いているのだが、地球に脱走する者も。そんな脱走したレプリカントたちを始末する“ブレードランナー”という警察の特殊部隊が存在する。本作は元”ブレードランナー”の主人公デッカードが上司のブライアントに呼び戻され、寿命を求め脱走したレプリカントたちを『解任』(レプリカントを始末することは殺害、処刑とは呼ばれず『解任』と称される)するよう命じられるところから始まる。

(※コラム中のIMDbのランキングは2019年10月17日現在のもの)

文・竹内周平
95年生まれ (『ウォーターワールド』とタメ)
面白い映画が好きです、でも面白くない映画の方がもっと好きです。


編集・川合裕之
 絵・くどうしゅうこ

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