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泣いた人にも、キレた人にも、まったく未見の人にも必携のアニメ批評 | 『シン・エヴァンゲリオン』を読み解く(河出書房新社)

「エヴァンゲリオンを見た」とは言い難い空気はやはり否めない。

会計時、「見た」とさえ言えばお代が半額になるとしても、ちょっと抵抗がある。自分は本当にエヴァンゲリオンを知っているのだろうか。疑念が頭をよぎる。消えない。

いや、そもそも「ヱヴァンゲリヲン」と表記しないと怒られる?いやいやでも「シン」の方は「エヴァンゲリオン」だしなあ。旧劇? 新劇? 漫画もあるし ……。庵野秀明のことだって、自分はどれくらい知っているのだろうか。自信がない。

ほら、あの大御所でさえ口が滑って大炎上。気軽に感想を呟くのにだって勇気がいる火薬まみれのムーブメントである。

だったらやめておこう。泣かぬなら俺ホトトギスは殺されない。

そうやって口をつぐんだ全ての観客に、そして「なんだか難しくてややこしい界隈があるものだ」と遠巻きに見ているあなたに、この本を薦めたい。

川合裕之(フラスコ飯店 編集長)

『シン・エヴァンゲリオン』を読み解く
(河出書房新社)

¥1,980
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==== 以下、さらに詳しい解説です ===

▼この本の収録コンテンツ


・斎藤環「エヴァの呪縛、その成立と解放」

・五十嵐太郎「ポストカタストロフの新景観」

・松下哲也「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は模型のアニメである」

・坂口将史「『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に見られる「特撮表現」」

・伏見瞬「物語の外側へ——宇多田ヒカルと真希波・マリ・イラストリアス」

・西田藍「ハーフ美少女、アスカ」

・久保豊「エヴァの呪縛に中指を突き立てる——『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にみる成長の主題」

・照沼健太「初恋の喪失と、ありがとう、さようなら。『シン・エヴァ』が描いた“成長”」

・高島雄哉「さよならの向こう側——〈説明不足〉の象徴としての宇部、あるいは〈情報過剰〉アダプテーション」

・最果タヒ「世界が殺した人たち」

・近藤銀河『シン・エヴァンゲリオン』とポストフェミニズム

・藤田祥平「宇宙物理学的観点からみた庵野秀明の死の問題とエヴァンゲリオンの継承」

・ふぢのやまい「ネビュラ・スライス・ギムレット」

・難波優輝「アニメーション・エヴァンゲリオン——動くもののポエジー」

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==== まだまだ続くよ! ===

『シン・エヴァンゲリオン』を読み解く?

2021年6月に河出書房新社から緊急刊行されたこの一冊。ついに完結した “エヴァ” の終わりと徹底的に向き合うために、『シン・エヴァンゲリオン 劇場版』を当代きっての執筆陣が論じています。

もう少しざっくり言うならば「エヴァについて色々な人が色々な視点・切り口で集まっている」ような一冊です。

最初のアニメシリーズ開始から26年。第3次アニメブームやその後の「セカイ系」作品を牽引し、社会に影響を与え続けている作品だけあって、論の切り口はさまざま。

「庵野の私小説としてのエヴァ」「アニメ制作」「旧劇で描かれた実存主義・精神世界について」「ロボットアニメとして」「平成史の1ページとして」「庵野の “やり直し” としてのシン・エヴァンゲリオン」などなど、ひとつのテクストから展開されたとは信じがたい非常に幅広い豊かなふり幅を楽しむことができます。

製作者は尊敬するべきクリエイターだが、決して過度に崇拝すべき絶対神ではない。

読み解く側の頭の中でアイデアが遊泳し、新たな模様が生まれる。批評という営みの可能性を感じます。なんだろう、ポカポカする、どうして。

「エヴァンゲリオン」を
少しでも知っている人なら……

これまでにエヴァンゲリオンシリーズとして発表されているのは、アニメ全26話+旧劇場版2本+新劇場版4本。漫画やゲームへのメディア展開も含めれば、その数はさらに膨らみます。

ただでさえシリーズの量が多いうえに、ご存知の通りの深淵さ。「エヴァンゲリオンを知っている」とは気軽に言い難い人は多いでしょう。

そういう人にこそ、この本を手に取ってもらいたいです。本書には本当にたくさんの解釈の切り口があります。「旧劇だけ観た」「最近の映画だけ見た」などという人にでも、理解と納得が胸を突き刺すお気に入りの論がきっとひとつやふたつ見つかることでしょう。

エヴァが終わっても、
この本は無視できない

『新世紀エヴァンゲリオン』という壮大な物語は26年という長い年月をかけ、ついに完結を迎えました。

それでも、 “エヴァ” がアニメ史のなかで重要な作品であることには変わりありません。

これから生まれるアニメ作品たちは、多かれ少なかれ “エヴァ”の息吹を受けています。一つの作品についてさまざまな論者が語る多様な論は、これからのアニメ作品への解像度を上げてくれるに違いありません。「アニメーションとは何たるか」「作品解釈とはいかなるものか」を学ぶうえで、実例を交えた具体的なレッスンとしても優秀です。

庵野秀明という作家のこれからをウォッチするうえでも、この本は彼の作品を読み解く補助線となってくれるでしょう。この先にも脚本・監督を務める『シン・仮面ライダー』や、企画・脚本を務める『シン・ウルトラマン』が公開を控えています。そういった作品の副読本としても、きっと頭をきっちりかっきり整理してくれる批評集になるはずです。

エヴァが終わっても価値を失わないマスターピースです。

文/ 編集・フラスコ編集部


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