カテゴリー: ブックレビュー

服が多い。何しろ服が多い。クローゼットを突っ張り棒で拡張してもダメ。加速度的に服が増えていく状況の中で、ハライチの岩井は自身と愛猫モネの棲家であるメゾネット(1階と2階があるおしゃれな庭付きの家。1階に居ることもできるし2階に居ることもできる)の壁面にワイヤーを張り、服を吊るすことを思いついた。

好きなものを語ることが恐ろしい。好きな映画は? 好きな音楽は? 好きな女性のタイプは? そんな質問に答えようとするたびに喉の奥に冷たくてどろどろしたものが溜まってうまくことばが接げなくなるのだけれど、唯一「好きな作家は?」という質問にだけはすんなり答えることができる。川上弘美がたいそう好きである。平易と思われる文章の中にユーモアと晦渋なメタファーが埋め込まれ、道を歩いていたらいつの間にか異世界に飛ばされたり五百年くらい時が経っていたりするような心地がするから、好きである。

ところが、最近のぼくは川上弘美にまつわる二つの問題に悩まされている。一つは、川上弘美という作家が世間からは誤解されているような気がすること。もう一つは、川上弘美がすっかりマザーコンピューターになってしまったことである。

あなたのもとに、あるツイートが流れてきました。

あなたは当然「ひどい」と思います。リプライ欄にも同情的なツイートや歩きタバコに対する怒りのツイートが並び、さらには専門家らしき人が詳細に対処法を教えているものもありました。

あなたはこんなひどいことが二度と繰り返されないためにも、そのツイートのリツイートボタンを押しました。

後日、また別のツイートが流れてきました。

それは前にあなたがリツイートした【悲報】ツイートが、全くの嘘だということを告発しています。

「えっ、あれ嘘だったの??!」

しかも元の画像は、むしろほのぼのしたエピソードでした。

あの【悲報】ツイートを見たときに抱いた同情が、一気に腹立たしさに変わるのを感じます。無理もありません。あのツイートの主は、全く事実でないことをでっち上げて、多くの人を騙したわけですから。あなたは自分がデマを拡散してしまったことに気づき、それを訂正するためにも、告発ツイートのリツイートボタンを押しました。