Te wo Arai mashou.

なぜ TENET という回文なのか。
〈回文的因果律〉から導き出されるニールの正体
|『TENET テネット』評

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この記事には映画のネタバレがあります。

ご用心!

ニールは実はキャットの息子のマックスなのではないか――という説があります。パンフレットで山崎貴が自身の妄想だと前置きしたうえでそう語っているのに加えて、国内外の考察ファンがこぞって声を挙げているお話です。

え、本当に?

にわかに信じがたい仮説ですが、もしそうだとすればこんなに楽しいことはありません。きょうはこの説を考えて一緒に頭を悩ませてみましょう。

目次

・なぜニールがマックスだと言われるのか
・〈回文的因果律〉の世界
・回文のような時間軸の中間地点は「世界を救う」瞬間だ
・「ニール=マックス説」に再挑戦 全ての行動に意味が介在すべきだからこそ
・重要なのは「記録」だ
・フランシスコ・ゴヤに隠されたヒント?
・そしてこの文章もまた……

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なぜニールがマックスだと言われるのか

まずは世に憚る「ニール=マックス説」を紹介しましょう。これだけでも十分に興味深いですよ。最初にこの海の飛び込んだペンギンは、海外メディアの Esquire です。

キャットの息子の名である “MAX” はむろん愛称であり、正式には “Maximilien” だ。なるほど、たしかにバートン家の高貴な家柄の血を引いており、なおかつ高慢な父セイターの子に相応しい名前です。

そして、この “Maximilien” という名を逆から読むと Neil の文字が浮かび上がります。便宜的にハイフンを打って “Max-imi-lieN” と書くと分かりやすいでしょうか。 “Max I’m” と “Neil I’m” がそれぞれ回文のように繋がっているわけです。

これに加えてキャットと同じくニールがイギリス訛りの英語を話すこと、ニールを演じたロバート・パティンソンがこの役のためにブロンドに髪を染めていることなどが指摘されています。

へえ、やるじゃん。なかなか説得力のある仮説です。

以上の理由でニールの正体がキャサリンの息子・マックスではないか?と予想されているのです。彼が未来から来たことは明示されていましたが、まさかあの幼い子の将来の姿だったなんて。

「息子が、息子が……」と固執するキャットと、にもかかわらずほとんど画面に移らずに不在を決め込む子・マックス。不在こそがその存在を強調していましたが、なるほどたしかに何かありそうです。

信じたくなりそうな話ですが、いいや、まだまだ論拠は弱い。

①マックスの正式な名前は憶測に過ぎない
②逆さ読みも偶然である可能性がある
③「ブロンドに染めた」事実は作品の “外” にある

以上の3つがその反証です。

特に③は大きな問題点です。たしかに「撮影のために染めた」というのは大きな判断材料かもしれません。ときに映画より外のテクストを借りて映画を読み解くことも重要です。かといって、核心部分をも映画外テクストに委ねるわけにはいきません。頼りたいけど、頼るわけにはいかないのです。しかも “Maximilien” はフランス語綴り。「二人はイギリス訛りだ!」という事実との親和性が低いです。

いや、それでもやっぱり〈信じ〉たい。

ニールがキャットの子だったとしたら。心くすぐる刺激的な仮説なのですよ。僕はこの魅力的な妄想にすっかり取り憑かれてしまったようです。作中でマックスはほとんど姿を見せません。

前半部のクルーザーのシーンでは旅行中で不在。クライマックスのクルーザーでも船外に連れられています。特に前半ではポンペイ遺跡に旅行中でした。火山の噴火で滅亡してしまった都市に足を運ぶのです。そんな彼が後のニールだとしたらーー。

諦めきれない。今度は僕自身が、名前のスペリングとはまた別のアプローチから「ニール=マックス説」を考えてみました。

こんな TENET の解釈はどうでしょうか?

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川合 裕之 Written by:

95年生のライター/ 編集者。長髪を伸ばさしてもらってます。 フラスコ飯店では店主(編集長)をしています。

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