Te wo Arai mashou.

タグ: 三浦透子

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忘れた頃にいきなり現れて、おもむろに心臓を握ってくる。とてもじゃないけど、息もできない。そして、いきなりいなくなる。本当なら、会った瞬間にぶん殴って、叫びながら逃げた先の河原なんかで涙のひとつでも流してやりたい。なんで戻ってくるんだよ。とっくにさよならしたはずなのに。すれ違うだけで、苦しくてしょうがないんだよ。

でもさ、やっぱり会えるとなんだかんだ嬉しいんだ。色々とひどいことを言ってしまってすまない。謝るよ。本音を言うと、どこにいたの、探してたよ、って感じなんだ。実のところ、君に会って心が震えているうちは、僕はまだまだ大丈夫なんじゃないかなって思ってる。素直だろ。だから、忘れないように君のこと、君に会ったときのことを書いておくよ。できるだけ、いつまでも覚えておきたいから。

僕はといえば、すっかり「僕と書いて愛」とは読まなくなってしまったよ。ああ、そう。彼は、相変わらず。君なら、そんなの前前前世から予想していたかもしれないけど。でも、僕も、愛にできることはまだあるんじゃないかとは考えているよ。きっとそれはいくら汚れてしまっても変わらないはず。と、思いたいけど、まあ、これからどうなるかわからないよね。ただ、愛は今でも二日酔いだけは防いでくれないし、治してもくれないよ。これも相変わらず。愛がなんだ。うるせぇバーカ。

文・西川タイジ

1986年山形県生まれ。『トーキョーブンミャク』運営。肩書きは特にありません。好きに呼んで下さい。編んで書いて読んで飲んで観て聴いて泣いています。

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『さよならシティボーイ』について詳しくはコチラ

(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会

言葉とは何だろう。言葉が通じるとは、話をするとは、どういうことだろう。言葉を使うことは否応なく、言葉を使わなければ出会うことのなかった深い深い孤独と対面することでもある。同時に、言葉がなければ見ることのできない祝福の光を浴びることでもある。そのような孤独の暗闇と、トンネルの先にある朝の海のような眩しい光とのあわいを、一台の赤い車が走ってゆく。

『ドライブ・マイ・カー』という映画について語る時、まず僕はこういった抽象的なイメージを語らなければならない。すぐさま細部を語るには、あまりにこの映画の引力が強すぎる。

文・すなば

1991年生まれ。会社員として働く傍ら文筆家として活動。海とシティが好き。2021年10月に初の単著『さよならシティボーイ』(トーキョーブンミャク)刊行。

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