I’m back. Omatase. 

タグ: BUMP OF CHICKEN

2021.02.03 / / わた藤

お好み焼き屋で、父親がジンジャーエールを飲んでいる。一口、もう一口と飲んで、ふと「やっぱりコーラにすればよかったなあ」とぼやく。

わたしはいてもたってもいられず、半分泣きそうになりながら「残りわたしが飲むからコーラ頼んだほうがいいよ」と言う。

お父さんに何1つ心残りがありませんように。

父は、変なタイミングで急に必死になるわたしの顔を、不思議そうに眺める。

あの頃のわたしは、「わたしを無くしても父でいられる」ということを、全然わかっていなかったのだ。

題字・キョウハナ 師走。皆様いかがお過ごしでしょうか。フラスコ飯店 店主もとい編集長の川合です。 2020年に僕たちがフラスコ飯店で取り扱った作品を改めて一覧でお届けします。 今年はこんなんでしたね、来年はどうですかね。そんな毒にも薬にもならない湿っぽい話は後回しで結構。まずは食事の代わりになるような文章をどうぞ。 2020年にフラスコ飯店が扱った作品一覧(更新順) 作品名をクリックすると、その作品を題材にしたコラムやレビューに遷移します。 『マーズ・アタック!』 『ラストレター』 アニメ『ボージャック・ホースマン』 『ヒミズ』 『ハ…

2020.12.25 / / わた藤

あなたにとって、2020年はどんな年だっただろうか。突然猛威を振るった新型コロナ感染症に東京オリンピックの延期、外出自粛の日々。思うところはいろいろあるけれど、わたしにとって外せない2020年の象徴は「BUMP OF CHICKEN」だった。

世間を、特に BUMP OF CHICKEN ファンを騒がせたニュースが2つある。

1つは、Vo.Gt. 藤原基央の結婚発表。バンドのレギュラーラジオである『PONTSUKA!!』 内で自身の口から公表し、インターネット上では祝福や驚き、ショックの声など、様々な反応が見られた。

2つめは、Ba. 直井由文の不倫スキャンダル。結婚を隠して女性と交際していたことが元交際相手の女性によって週刊誌にリークされ、こちらも大変な騒ぎとなった。メンバーはラジオと書面でコメントを寄せ、直井は活動を休止、当面は残りの3人でバンド活動をすることになった。

もちろん、多くの人にとっては、これらは毎日世に放たれる様々なニュースの1つに過ぎない。1週間もすれば世間話にもならない、いつものありふれたゴシップだ。

だけどわたしは、特に直井の不倫報道にものすごい衝撃を受け、それはこの記事を書いている現在に至るまで、ずっと尾を引いている。わたしが好きな BUMP OF CHICKEN というバンドが一体どういうバンドで、これから彼らの曲をどんな顔をして聴いていいのかが、さっぱりわからなくなってしまったのだ。

2020.08.31 / / わた藤

高校3年生の時、家庭の事情で気を病んで1年半に渡って不登校気味だったわたしを絶望させた言葉がある。担任の先生が言った「でもあなたはいつか自分で働いて、自分で生活しなくちゃならない。そのためにはちゃんと大学に行かないといけないのよ」という言葉だ。

薄暗い進路指導室で、先生の鋭くも暖かい視線がおでこに突き刺さっていた。わたしはなんとか「じゃあ、破滅します」と答えた。先生の深いため息がわたしの前髪を揺らした。

2020.07.07 / / わた藤

突然だけど、わたしには友達が少ない。生まれつきそういう体質なのだ。

「一人でも平気そうな顔をしている」とか「自分の世界持ってそうだから話しかけにくい」とよく言われるし、わたしが各種SNSで発信しているような事はいわゆる「考えすぎ」で、「考えない」人たちから見ればそれらは気持ち悪く、「考える」人たちのことは萎縮させてしまうようだった。

でもそれを気に病むことはない。わたしには「赤い星」が付いているから。

これもマスト?あれもマスト?

世の中にはコンテンツの品数が多すぎる。

どんなカルチャーを食べてよいかわからないと悩まないよう、フラスコ飯店が食べ合わせの良い「定食」を自信をもってご提案いたしましょう。

脳みそが痛くなったことありますか?

「膝が笑う」とか「腰が重い」みたいな慣用句として、「脳みそが痛い」があってもいいと思うんですよね。僕はたまにそういう感覚になることがあります。難しい本を読んでいるときとか、意図的に受け手を迷宮に誘い込んでくる映画を見ているときとか。何が何だかわからない! でもめちゃくちゃおもしろいことだけはわかる。痛みでアドレナリンが出ているのがわかる。そんなとき。

この定食では、そんな「脳みそが痛い」作品を集めてみました。

おしながき
・映画『メメント』
・小説『道化師の蝶』
・映画『メッセージ』

2020.06.05 / / わた藤

自転車のうしろに彼女を乗せて、陽が落ちきった街を走る。耳には片方ずつ分け合ったイヤホンが刺さっていて、ふたりで同じ音楽を聴いている。彼女を学校から駅まで送るたった5分たらずの道のりで、わたしたちは毎日、流れ星になっていた。今が未来だった頃の話だ。

2020.05.11 / / わた藤

バスに揺られている。窓から柔らかい光が差し込んで、まるで自分が豆苗になったみたいな、のびやかでふくふくとした気持ちになる。程よくぼーっとしながら音楽を聴いていると、ふとある歌詞が耳に残り、曲を巻き戻して最初から再生する。豆苗のわたしは人間に戻り、「ああ、つかまえたんだ」とわかってしまう。さあっと全身に鳥肌が立ち、なんだか目頭が熱くなる。

何万回も聴いたはずの曲が何を言っているのか、突然わかることがある。一生懸命生きていたご褒美みたいな、でももう「わかる前」には戻れなくてもったいないみたいな、そんな瞬間。

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