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中学3年生以来、ヒールのある靴を履いたことがない。持っていないから、デートでも大学の入学式でも履かなかったし、就職活動はスーツ一式を揃える前に辞めてしまった。
特に何かの主義主張があるわけではない。わたしの好きな服の系統にはヒールのある靴はそぐわないし、24.5cmで甲高幅広の足に合わないから履かない。ただそれだけ。
でも、世の中にはわたしの「ただそれだけ」を渇望する人がいる。
青い靄がかかった桟橋の上で真っ赤なハイヒールを履いた少年は、まるで自分の魂を解放するように、うれしそうに踊る。