(C)2020「私をくいとめて」製作委員会
高校からの友人たちとオンライン飲みをしていたときだった。オンライン飲みあるある:終わり方がわからなくてずるずる長くやってしまう。あのときも床にあぐらをかいて座って腰を痛めながら、盛り上がりのピークも超えたのにゆるゆるとしゃべっていた。
最近見た映画の話になった。ちょうど1回目の緊急事態宣言が解除されて映画館の営業が再開したころで、ずっと期待していた『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を映画館で見ることができて喜んでいた。
モニターには僕を含め4人の顔が写っている。男女2人ずつ。そのうち女性2人と僕の3人が『若草物語』を見ていた。「どうだった?」と問われた僕は、
「めっちゃおもしろかった。すごいアツかったよね」
と答えた。それを聞いた女性2人がどういう反応をしていたのか、僕はあまり覚えていない。仮想空間には共有できる空気はほとんどない。だから僕が覚えているのは僕の部屋の空気だけで、それは何かを避けて当たり障りのないことを言ったときの空気だった。でもその空気を覚えていることも忘れてしまっていた。