あたらしく自転車を買った。嬉しくて無闇やたらに走り回っているとこんなところに喫茶店があったのかと虚をつかれる。年季の入った木造住宅の玄関先には白いペンキで “珈琲” とだけ書かれた、これまた年季の入ったボードが掲げられている。中を覗かずとも店の2階が居住スペースであることが一目瞭然で、いかにも僕が好きそうな佇まいである。
知ってさえいればもっと早くに来たのにと思いながらその喫茶店を通り過ぎ、次の信号で行儀良く停止する。待っているあいだ、こんなに近所にあるのにどうして気がつかなかったのだろうと思う。